2022年4月期決算のJ-REITのNAV倍率、含み益、稼働率の推移を見ていきます。

・NAV倍率
20220630J-REIT(4・10月決算)NAV倍率推移
20220630J-REIT(4・10月決算)NAV倍率推移2

 4月のJ-REIT市場は、月初は続伸して始まったものの、急ピッチな上昇の反動や利益確定売りに加え、米長期金利が上昇したことを嫌気した売りなどから、やや軟調な動きになりました。米連邦準備制度理事会(FRB)理事の量的引締め(QT、保有資産の圧縮)をめぐるタカ派的な発言や、ロシアへの追加経済制裁に対する懸念などを背景に、東証REIT指数は4月7日には2,000ポイントを下回りました。その後も、米金融引締めへの警戒からやや売りに押されましたが、押し目買いも入り、底堅く推移しました。
 スターツプロシード投資法人は継続的に推進してきた施策の効果で、NAV倍率は2021年4月期末時点1.03倍、2021年10月期末時点1.06倍、2022年4月期末時点1.0倍となり、継続して1.0倍を上回る水準にまで向上しているが、引き続き投資口の評価を高める努力が必要と認識・競合REIT対比で、資産規模等ではまだまだ劣位の状況にあり、安定性の高い魅力あるポートフォリオの拡充と構築が必要と認識ということで、対策としてポートフォリオの質的向上、パイプライン物件の取得を通じた流動性・安定性の向上と並び余剰資金を積極的に活用し 自己投資口取得等の施策により、投資主への還元強化を目指すとしています。
 既に積水ハウス・リート投資法人とケネディクスオフィス投資法人ではそれぞれ手元資金の状況、財務状況及びマーケット環境等を総合的に勘案した結果、自己投資口の取得及び消却により1口当たりNAVを上昇させること及び1口当たり分配金を向上させるたための自己投資口の取得を発表しています。今は余剰資金は自己投資口の取得を行い、投資口価格の下落を防ぐことに動くことがトレンドとなっているようです。


含み益
20220630J-REIT(4・10月決算)含み益推移
20220630J-REIT(4・10月決算)含み益推移2

 2022年4月期も順調に含み益は積みあがっているようてすが、2022年4月期末の段階では含み益が大きく上昇している投資法人は見受けられませんね。各投資法人の抱える物件単体ベースの鑑定評価額は底を打ったという見方が大半のようです。結果として、J-REITでコロナ禍により減損になった物件は無かったということが大きいと思います。コロナによる影響で飲食店系のテナントが退去になったことや、新規テナントが中々決まらないということはありますが、減損になるレベルのダメージは無かったことが救いですね。
 一応、ユナイテッドアーバン投資法人がまさかの稼働率0%で減損損失という事態を招きましたが、府中市で1テナントでの一括貸しを目論んだためという自業自得なのでコロナが原因ではなく運用部の戦略ミスだと考えています。
 2022年4月期も長く緊急事態宣言&まん防の影響に移動が制限されていましたが、星野リゾート・リート投資法人のホテルは一番影響を受けやすいと思うのですがスポンサーによる積極的な情報発信の効果もあり以下の星野ブランドのホテルは鑑定評価額が前期よりも上昇しています。

 ①リゾナーレ八ヶ岳:7,430百万円→7,560百万円
 ②リゾナーレ熱海:4,870百万円→4,890百万円
 ③界 松本:806百万円→810百万円
 ④界 玉造:880百万円→887百万円
 ⑤界 伊東:1,600百万円→1,610百万円
 ⑥界 阿蘇:711百万円→712百万円
 ⑦界 川治:1,170百万円→1,180百万円
 ⑧界 遠州:1,080百万円→1,090百万円

もちろん下がっている物件もありますが、上昇している物件の方が多い状況です。変動賃料により投資法人の賃料収入が上昇するような取り組みをこころみて欲しいところですね。


稼働率
20220630J-REIT(4・10月決算)稼働率推移
20220630J-REIT(4・10月決算)稼働率推移2

 NTT都市開発リート投資法人ではオフィスビルの稼働率について従来から稼働率100%の大型物件以外はポジティブな結果には結びついていないようです。一方、ケネディクス・オフィス投資法人は様々な施策で稼働率UPに成果が上がっています。KDX飯田橋ビルにおいては、内装・家具付きのTurnKey Officeについて、専用Webサイトに加え、Web広告等の新しいツールを活用して広くメリットを訴求し、リーシングキャンペーンとの相乗効果により、稼働率が91.8%になりました。KDX土佐堀ビルでも内覧会やリーシングキャンペーン等の実施を通じ、幅広く入居検討先を募り稼働率は100%といった物件の特性とテナントの移動タイミングを狙い上手くハマっているようですね。
 同じ中規模のオフィスビルが主力のトーセイ・リート投資法人もオフィスビルの稼働率が94%台を回復しており、新規契約が解約を上回る状況になっています。オフィスの入退去理由は、「拠点の新規設置」や「業務拡大」の件数が、「集約・廃止」を上回ったということなのでポジティブな理由での退去のようです。T'sgarden西船橋では2022年4月末で稼働率が91.7%。退去が集中し、稼働率低下申込ベースで満室稼働。T'sgarden梶ヶ谷では、卒業シーズンに退去が集中したことで稼働率が70%台に悪化しましたが、空室のリニューアルを推進したこともあり、稼働率は85%台まで回復、更に新規申込があるということを明らかにしています。
 レジデンスの方を見てみるとスターツプロシード投資法人では、最も需要の安定している平均的な所得層を対象にしたシングルタイプやファミリータイプの賃貸住宅を主要な投資対象としすることで稼働率の安定性を見せています。賃料相場や入居者需要等の変動に可能な限り対応できるポートフォリオの構築と、中長期的に安定した運用を目指しています。シングルタイプは6~10万円の賃料帯で75.3%、DINKSタイプは8~14万円の賃料帯69.3%、ファミリータイプは8~16万円の賃料帯66.3%と平均的な所得者層をターゲットとした物件であるということをアピールし稼働率の安定性を維持しようという狙いがあります。