随分前のことになりますが2022年6月17日にエスコンジャパンリート投資法人の資産運用会社の㈱エスコンアセットマネジメントが、親会社である㈱日本エスコンからの取得となる不動産の鑑定評価を依頼するに際し、適切な利益相反管理の観点から問題となる、不動産鑑定業者の独立性を損なう不適切な働きかけを行い、また、不適切な不動産鑑定業者選定プロセスをとっていた。ということで証券取引等監視委員会から内閣総理大臣及び金融庁長官に対し、行政処分を行うよう勧告されました。

J-REITの宿命ともいえる問題
㈱エスコンアセットマネジメント・スポンサーの完全な犬になる

㈱エスコンアセットマネジメント・鑑定会社選定ごまかし

【出典:証券取引等監視委員会ホームページ】

 ㈱エスコンアセットマネジメントは、親会社等の利害関係者が保有する不動産を投資法人に取得させる際には、第三者である不動産鑑定業者に対して、取得させようとする不動産の鑑定評価を依頼し、算定された鑑定評価額を上限として当該不動産の取得価格を決定している。しかし、㈱エスコンアセットマネジメントは、不動産鑑定業者から提示された鑑定評価額に係る中間報告又は概算額が親会社の売却希望価格に満たなかった3物件の不動産について、親会社の売却希望価格を優先し、親会社の売却希望価格を伝達するなどしたうえで、鑑定評価額が当該売却希望価格を上回るものとなるよう、算定を依頼した不動産鑑定業者に対し、鑑定評価額を引き上げるための働きかけを行っていた。こうした行為は、不動産鑑定業者の独立性を損なう不適切な働きかけであると認められる。という問題です。

 別にこのままスルーしてもよかったんですけどね、一応触れておきます。ハッキリ言いますがこれは頻繁に起こる問題です。特にスポンサーが物件を開発し、開発した物件を投資法人に売却する事業に依存しているタイプのスポンサーでは日々にして起きています。

 言い切って良いと思いますが、ほとんどの資産運用会社がここら辺を会って直接、もしくは電話でやんわりと伝えます。鑑定評価会社にとっては投資法人の数十棟~数百棟近い継続鑑定の売上が年2回入ってくる計算なので、鑑定評価会社にとってはお得意様です。露骨に嫌な顔をされるケースはほぼありません。圧力かけた上で鑑定評価報酬を値切ろうとしたとすると鑑定評価会社側からのリークもあり得ますが・・・。2の鑑定会社選考プロセスの稟議書から辿られたんでしょうね。


 そもそも、以下の関係が成り立っています。  

 ・スポンサー(上記でいう親会社)は高い価格で投資法人に物件を売りたい。

 ・投資法人・資産運用会社(㈱エスコンアセットマネジメント)は安く物件を買いたい。

 これが表面上の考え方です。スポンサーと投資法人では利害が一致しません。必ずどこかで決着しなければなりません。ここでポイントとなるのが投資法人の運用ガイドラインです。
 運用ガイドラインの中で全ての投資法人が鑑定評価額以上の金額で物件を取得しないというルールを設定しています。(つまり、時価よりも安く取得しますということ)

 これを曲解すると、スポンサーは鑑定評価額までの値段まで物件を売却できるということを意味します。なので内々でスポンサーは資産運用会社のアクイジションの方々を対象に「鑑定評価額を高くしろ」という圧力がある訳です。スポンサーにとって高く売るには「高い鑑定評価額を付けた鑑定評価書が欲しい」訳ですから。
 多分律義に鑑定評価額を高くしろといった内容をメールしてしまったか、録音を取られたのだと思います。鑑定評価会社側のラインから発覚した可能性もありますね。いずれにしろ都合の良い鑑定評価会社だと思って選定プロセスをごまかした挙句、その鑑定評価会社に手を噛まれた訳ですね。

 これは資産運用会社内の出来事なので、投資法人の執行役員や監督役員には見つけられませんよ。


ヤバイJ-REITと資産運用会社を見抜くには

 資産運用会社の株主は誰か?

 投資家さんがやばいJ-REIT運用会社を見抜くには、資産運用会社の株式は誰が持っているか見てみましょう。資産運用会社のホームページを見れば記載されているページがあるはずです。複数のスポンサーがいる場合は安心と思って良いと思います。資産運用会社の社員はスポンサーの子会社である場合が一般的です。スポンサーの物件を取得しないと子会社が選択したら人事考課により減給、ポストの更迭は目に見えています。しかし、複数のスポンサーがいると勝手ができないのである程度の抑止力になります。

 ②第三者からの取得実績はあるか?

 次は投資口を取得しようとしている投資法人がスポンサー以外の第三者からの取得の実績があるかどうかを見てみましょう。中には第三者からの取得はありえないという雰囲気がある資産運用会社もあります。
 運用ガイドラインに第三者からの取得を検討することは全ての投資法人が記載していますが、実績が無ければその第三者からの取得ルートは無いと判断頂いてよいと思います。これから起こるかもしれない「予想」ではなく、過去の「実績」を見るべきです。

 例えば、マーケット賃料よりも高い賃料で賃貸出来ており、退去後のリーシングも容易という物件があれば、投資家の分配金の上昇のために取得検討するべきです。その物件が野村不動産が建てたものか、東急不動産が建てたものかは投資家さんにとっては関係の無いことです。

 ③スポンサーの本業は何かを見極める

 スポンサーの本当の本業は何か調べてみましょう。例えばディベロッパーであればマンションを開発しそれを1部屋ごと個人に売却しますよね?。新築マンション用の特設サイトまで作ったり、モデルルームで営業したりするものです。つまりスポンサーは自分の仕事がちゃんと存在している場合、本業の方に一生懸命なので投資法人への物件売却は必ずしもMustで無くなります。

 中にはありますよね。あんたの本業は何?っていうスポンサー。「グループシナジー」、「ワンストップソリューション」をアピールしているところは要注意と思って良いでしょう。J-REITに物件を売却することが予算に組み込まれているようなスポンサーは危ないですね。