2022年7月20日に大江戸温泉リート投資法人の決算が発表されました。
分配金は当初の予想一口当たり分配金が1,585円のところ1,521円で着地しました。

新スポンサーの関りは相変わらず見えず

 2022年5月期における全体の客室稼働率は59.0%となりました。ADRは前期比プラス1.1%と維持につとめ回復局面に備えています。2022年5月期の投資法人の変動賃料は、テナントである大江戸温泉物語グループの2022年2月までの年間業績に基づき算定されるため、当該期間の稼働の低下を受け全施設について前期に続き当期も未発生となりましたが、固定賃料は満額収受できています。2022年5月期末の鑑定評価額は、合計で37,799百万円となりました。前期末に取得した鑑定評価額との比較では、還元利回りについては変動がありませんでしたが、一部の施設が資本的支出の計画見直し等により変動し、合計で240百万円の増加となりました。当期末におけるポートフォリオ全体の含み損益については、当該13物件の減価償却により含み益が増加し5,324百万円となりました。また、新型コロナウイルス感染症の影響下、キャッシュマネジメントの観点から一部実施繰り延べ可能な資本的支出の延期等支出の抑制に努めながら、テナントによる必要な修繕の実施を管理するとともに、保有物件の状況及び特性等を考慮した資本的支出に関する計画に基づいて、機能維持に必要な資本的支出を実施しました(賃貸借契約に基づき修繕費は原則テナント負担となっています。)。さらに、大江戸温泉物語グループの運営物件にとどまらず、今後の資金調達環境の改善後を想定して、広くマーケットからの新規物件の取得活動、情報の収集を継続的に行っています。上記の運用の結果、2022年5月期の業績は、営業収益1,291百万円、営業利益554百万円、経常利益354百万円、当期純利益353百万円となりました。

 決算短信の中で2017年11月1日付でスポンサーとの間で締結したスポンサーサポート契約に基づき、大江戸温泉物語グループが保有又は開発する温泉・温浴関連施設の取得に係る優先交渉権が付与されており、また同グループが入手した第三者による物件売却情報の優先的提供が行われることから、これらを最大限活用することにより主として大江戸温泉物語グループが保有し運営する大江戸モデルが導入された温泉・温浴関連施設の中から投資法人の投資基準に合致した物件を継続的に取得する方針としています。
 しかし、レンダーや投資家さんが見ているのは大江戸温泉物語グループのスポンサーであるローンスターの動向のことです。2017年11月1日付のスポンサーサポート契約は既にレンダー等の間では効力は無いと見られている可能性が高いですね。


財務評価は赤色信号
20220728大江戸温泉リート投資法人LTV・DSCR推移

 資金調達環境については、新型コロナウイルス感染症の影響が長引いたホテル系セクターへの与信環境は厳しい状態が続いており、金融コスト上昇や借入期間の短期化が継続しております。その中で、2022年1月に「大江戸温泉物語 長崎ホテル清風」を譲渡し、売却手取り金については、主に既存借入金の返済に充当し、財務体質の改善を行いました。
 2022年5月期の財務の動きは、2022年2月28日を返済期日とする短期借入金4,349百万円、2,102百万円、及び230百万円の返済原資の一部に充当するため、㈱三井住友銀行をアレンジャーとする協調融資団から短期借入により3,236百万円、長期借入により3,215百万円、㈱三井住友銀行から短期借入により220百万円の資金調達を行いました。また、2022年5月31日を返済期日とする短期借入金3,215百万円、220百万円、及び長期借入金3,093百万円の返済原資に充当するため、㈱三井住友銀行をアレンジャーとする協調融資団から短期借入により1,736百万円、3,173百万円、㈱三井住友銀行から短期借入により210百万円の資金調達を行いました。さらに、手元資金により2022年1月末日及び4月末日に各々87百万円の約定返済を実施するとともに、2022年1月13日に資産の譲渡に伴う600百万円の期限前弁済を実施しました。その結果、当期末時点での有利子負債総額は11,874百万円、LTVは34.2%となっています。

 2021年11月期は運用物件に抵当権を設定することでレンダーのお茶の濁したようですが、2022年5月期は具体的にレンダーから返済計画を不安視していることが伝えられていると考えられます。同じホテルの運用でも星野リゾート・リート投資法人やジャパン・ホテル・リート投資法人ではレンダーから厳しい要求を受けている点が見られないので物件がホテルであることよりも、スポンサーのJ-REITに対する姿勢が不透明であることがレンダーからの要求がキツくなっている理由かと思います。