日本格付研究所(JCR)がスターツプロシード投資法人と三菱地所物流リート投資法人に対し相次いで格上げをしているのでご紹介致します。
スターツプロシード投資法人の格付評価
長期発行体格付:A-→A
格付の見通し:ポジティブ→安定的
債券格付:A-→A
スターツプロシード投資法人の資産規模は107物件、取得価格総額891億円と、相応に分散を確保したポートフォリオが構築されている。2016年11月の公募増資以降、増資を伴う外部成長は実現していないものの、築浅物件への入れ替えによりポートフォリオの質を維持する取り組みが見られている。足元では、13物件、220億円超のスポンサーパイプラインを確保しており、投資法人の良好な資金調達環境も踏まえると、ポートフォリオのさらなる拡大と分散に向けて公募増資の早期実現が期待される。保有物件の運営面では、全国に広範な店舗網を有す
るスターツピタットハウスとの協働を通じて、全体として賃料増額と稼働率96%前後の高稼働により取得価格ベースのNOI利回りで5.5%(2022年4月期)の良好なパフォーマンスが示されている。財務面では、LTVコントロールやレンダーフォーメーション、返済期日の平準化など、概ね安定した運営が維持されている。05年の設立から長期間にわたるトラックレコードを踏まえると、引き続き強固なスポンサーサポートによる安的な投資運用が想定されることから、格付を1ノッチ引き上げて「A」とし、見通しを安定的とした。
直近1年では、1物件(帳簿価格6.6億円、譲渡価格7.6億円)の売却と、2物件(取得価格総額13.4億円)の追加取得が実施されている。取得物件のうち「プロシード石川台」は太陽光発電システムのほか、IoTを活用した最新の住宅設備機器が導入されたスマートホームとなっており、スポンサーが有するノウハウを活かして保有物件の差別化を図る取り組みが見られている。ポートフォリオ全体では、平均築年数が2022年4月期末で17.4年と上昇傾向にあることから、修繕費や CAPEX の活用による経年対応や、適切なタイミングでのリニューアル工事の実施などが、引き続き内部成長に関する重要なポイントになると考えている。
財務面では、総資産LTVが2022年4月期末で50.6%と、住居系J-REITとしては標準的な水準で安定的にコントロールされている。良好な市場環境を背景に保有物件の含み益は同期末で168 億円(含み益率19.8%)となり、財務バッファーが拡充している。また、レンダーフォーメーションではスポンサーの親密先を中心に直近の新規参加行も含め16の金融機関との取引が継続されている。資金調達に関して、21 年 11 月に発行した投資法人債(グリーンボンド)をはじめ、調達期間の長期化と調達手段の多様化が図られており、2022年年5月のリファイナンス時点で平均残存期間3.2年、固定化比率59.9%と、財務の安定性向上が見られている。
賃料増額と稼働率の状況もちゃんと評価に反映することになったのはよう傾向だと思います。コロナの影響を鑑みて毎月稼働率の前年比を公表するようになったことも個人的には評価してほしいところですね。IR情報として開示されるということはレンダーもHPから確認できるということなのでプラスになると思います。
三菱地所物流リート投資法人の格付評価
長期発行体格付:AA-→AA
格付の見通し:ポジティブ→安定的
債券格付:AA-→AA
三菱地所物流リート投資法人のポートフォリオ・キャッシュフローの安定性が増している。公募増資を絡め、2022年3月にスポンサー開発物件の「ロジポート川崎ベイ(準共有持分 45%)」及び「ロジクロス厚木Ⅱ」を計458億円で取得したことで、資産規模は2021年8期末比約27%拡大(取得価格ベース)し、ポートフォリオについて一定のテナント分散や築年数の若返りが図られた。また、4.7%の平均鑑定NOI利回り(2022年2月末時点ほか)、99.9%の稼働率(2022年7月末時点)、2018年8月期以降8期連続での賃料増額改定の実現といったトラックレコードを確認できる。スポンサーとの強固な協働関係の下、今後も堅実なポートフォリオ・マネジメントの継続が想定される。加えて、相対的に低い水準でのレバレッジコントロールの状況などからみて、財務の健全性が維持されている。以上より、格付を1ノッチ引き上げ、見通しを安定的とした。
外部成長に関して3,000億円の資産規模目標が掲げられる中、スポンサーとAM双方の強みを活用した「ハイブリッド型」の成長戦略に基づき、PDP(Partnership Development Program:AMが主体的に開発アレンジメントを行う開発型ブリッジ)の手法も活用し、16物件(延床面積835,000㎡)について投資法人への優先交渉権付与が予定されている。当該優先交渉権の付与や行使状況を中心に、投資法人の取得時の目線に沿った形で外部成長が一段と進展していくか引き続き注目している。内部成長では、スポンサーによるテナントリレーションサポート(TRS)業務等を活用した、賃料増額改定の継続などによる収益のアップサイドの取り込みが主なポイントになるとみられる。
資産総額ベースの簿価LTVは、上述の新規物件取得でレバレッジも活用したことに伴い、2022年2月期末の32.4%から 2023年2月期末には35.4%へと緩やかに上昇する見込みであるものの、外部成長の進捗に応じた適切な水準でコントロールされている。財務バッファーとなるポートフォリオの含み益は、2022年2月期末で234億円(含み益率:13.9%)を有する。三菱UFJ銀行をはじめメガバンクを中心としたレンダーフォーメーションの維持、新規取引行の参画、サステナビリティへの取り組みも背景としたグリーンファイナンスの活用、返済期限の分散化、平均残存負債年数の長期化(2022年4月時点で5.8年)などの実績も示されており、資金調達面での懸念は特段みられない。
三菱地所物流リート投資法人は日本ロジステック㈱の民事再生への影響が開示されていないので影響は無いと理解していますが、それがあった場合も格付評価は上がったと思います。なぜならJCRはスポンサーのことばかり見ているから。スポンサーでパイプライン物件を多数用意していてもそのテナントが良好な財務状況にあるのかどうやってリーシングされているのかといった点はJCRは絶対に見ていません。なぜなら実務でそういった質問を受けたことが無いからです。賃料滞納ということになると、借入金も投資法人債も返済が難しくなるのでもう少し突っ込んで審査してほしいですね。
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