2022年9月14日に森ヒルズリート投資法人の決算が発表されました。分配金は当初の予想一口当たり分配金が3,030円のところ3,030円で着地しました。

ESG推進には金がかかる
20220925森ヒルズリート投資法人NOI推移

 2022年7月1日に運用中のラフォーレ原宿(底地)の第1回の売却を行いました(譲渡価格2,898百万円)。これは2回に分けて譲渡されるもので2回目の売却は2022年12月1日に実行される予定です。これは分割して譲渡を行うとともに、特定資産の買換え特例を活用することにより、譲渡益の一部は分配金として還元しながらも一部は内部留保して新規物件の取得に活用することで、ポートフォリオ全体の賃貸収益の維持向上を図ることが、投資主利益の向上に資すると判断したことによるものです。
 運用面はは2022年7月期においても、テナントニーズを把握した効率的かつ計画的な運営管理及び修繕工事によりテナント満足度の維持向上に努めるとともに、賃貸市況の動向を見据えながら新規及び既存テナントに対する積極的なリーシング活動を展開し、稼働率及び賃料水準の維持向上を図りました。2022年7月期末における投資法人の不動産ポートフォリオは、保有物件ベースで11物件、既投資額で409,252百万円(取得価格ベース)、総賃貸可能面積181,339.35㎡、期末稼働率は98.3%となっています。上記の資産運用の結果、投資法人の当期の営業収益は11,197百万円、営業利益は6,985百万円、経常利益は6,443百万円、当期純利益は6,443百万円となりました。

 2021年3月17日の規約変更で資産運用報酬の改定を行ったので、今までの運用成績で考えると下がるのですが、643百万円(前期は232百万円)というとんでもない金額が計上されています。これは1口当たり分配金に連動するような報酬体系にしたためラフォーレ原宿の売却益を一部分配金に回したことで起こった資産運用報酬の増加です。規約改定の時は資産運用報酬が下がるような説明をしていますが、結局1口当たり分配金や1口当たりNAVが上がると資産運用報酬が増加する仕組みになっているので、資産運用会社にとっては今までよりも割高な資産運用報酬を得やすい仕組みになりました。問題は増加した資産運用報酬はESG推進・人材強化に活用すると説明している点です。ESG推進には金がかかり資産運用会社で負担していたが負担しきれなくなったということを遠回しに言っているのと同じです。ESG推進が投資家さんの分配金を脅かすことになりそうな気がしてならないんですが・・・。


コロナ禍でも資金調達環境に変化無し

 2022年7月期の財務の動きは、既存の長期借入金9,500百万円の借換えのため、9,500百万円の長期借入れを行いました。その結果、当期末現在の借入金残高は172,122百万円(全て長期借入金。うち1年内返済予定の長期借入金15,200百万円)、投資法人債残高は20,300百万円となり、有利子負債残高は192,422百万円となっています。
 これらの借入れのうち、固定金利である投資法人債20,300百万円及び長期借入金11,079百万円に加えて、変動金利である長期借入金161,043百万円のうち138,666百万円については、金利上昇リスクに対応するため金利スワップの活用により実質的な金利の固定化を行っています(当期末現在、有利子負債に占める固定金利比率は88.4%です。)。なお、森ヒルズリート投資法人は、今後の借入れに関して、借入金の返済期限を分散することにより、リファイナンスリスクの軽減を目指しています。2022年7月期末時点の格付機関から得ている格付は以下の通りです。
・㈱日本格付研究所(JCR)、長期発行体格付:AA、格付の見通し:安定的