2022年8月期決算のJ-REITの収益性について分析しました。
・NOI利回り
NOI利回りのNOIは賃貸事業収入から賃貸事業費用を差し引き、減価償却費をプラスすることで算出しています。日本都市ファンド投資法人はNOI利回りが大きく下がっています。賃料が下がっていることも原因なのですが、恒常的に受取水道光熱費と水道光熱費の差が大きいのが気になります。共用部の水道光熱費はオーナー負担なので基本的に費用の方が収入よりも高くなるが一般的なのですが、商業施設が主力物件ということもあってかここの費用を削減できないか工が必要だと感じます。他にも前期と比べ修繕費が357百万円増加しています。だいたい2年に1回くらいのペースでリニューアル工事を行っているためその影響かと思いますが、イオンリート投資法人のように生活必需品に特化した商業施設ではなく、レジャーというか娯楽色が強い商業施設が主力であるため、あまり上手くいっている商業施設ではないと考えられるのでリニューアルはケチっても良いような気がします。
ヒューリックリート投資法人、ザイマックス・リート投資法人はオフィスビル中心の運用なので苦戦していると思いきやなかなか頑張っています。ヒューリックリート投資法人ではオフィス稼働率は、2022年2月に発生したまとまった解約申出の影響により2023年2月期に低下を見込むものの、2022年8月期の空室在庫の約半分の埋戻しにより、2023年8月には契約稼働率・賃料稼働率いずれも回復を見込んでおり、稼働率の低下は底打ちをしていると考えているようです。ザイマックス・リート投資法人はスポンサーの運営力により稼働率を維持できていると考えています。ヒューリックリート投資法人の方が自分達の運用する物件の強みも弱みも分かっているという印象です。
・当期純利益率
2月・8月決算投資法人の当期純利益率はグラフの通りです。どの投資法人も資金調達によるコストの影響は表面化していないようで増減は不動産等売却損益の影響よるところが大きいです。不動産マーケットはいずれも以前価格は下がっていない状況だったということもあり売却益を計上した売却が2022年8月期投資法人も多くなっています。
日本都市ファンド投資法人
・Gビル銀座01(準共有持分30%)・サミットストア中野南台店・:売却益1,831百万円
オリックス不動産投資法人
・ビサイド木場:売却益2,187百万円
・ラウンドクロス三田:売却益136百万円
森トラスト・ホテルリート投資法人
・コートヤード・バイ・マリオット東京ステーション(準共有持分1.0%):売却益46百万円
GLP投資法人
・GLP福崎(準共有持分50%):売却益1,516百万円
ヒューリックリート投資法人
・ヒューリック新宿三丁目ビル(信託受益権準共有持分50%及び一部底地共有持分50%):売却益647百万円
野村不動産マスターファンド投資法人
・一番町stear:売却益757百万円
日本アコモデーションファンド投資法人
・ドーミー洛北:売却益107百万円
ザイマックス・リート投資法人
・ルネッサンス21千早(準共有持分50%):売却益226百万円
GLP投資法人も既に21期を迎え2020年2月期にから運用資産の入替えを行うようになりました。毎期1棟ペースで売却しており、出口戦略はっかり立てた上で売却しているという印象を受けます。反対に取得する際は公募増資をからめて2-6棟まとめて取得するため公募増資で取得→後は毎期1棟ずつ売却していくというのがベースのシナリオだと思います。しかし、タイミングによっては毎期取得も行うので、結局成長のペースは他の投資法人と比べて早いと言えると思ます。日本都市ファンド投資法人は引き続き様子見となりそうですね。私募REITへの出資を通じて営業収入の安定性は確保したものの、投資法人自体の運用物件収支は渋いままなので今はあまり期待しない方が良さそうという感じです。
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