2022年12月15日に星野リゾート・リート投資法人が資産の運用を委託する資産運用会社である㈱星野リゾート・アセットマネジメントは2023年1月26日開催予定の投資法人の投資主総会議案が承認されること前提として、社内規程である運用ガイドラインを変更することを決議しましたと発表しました。

運用ガイドライン変更に至る背景及び変更理由
20221226地域における宿泊施設の役割と循環の考え方(概念図)

 これまで、星野リゾートグループと協働し、CSV(Creating Shared Value/共有価値の創造)の思想に基づき、環境・生態系、地域の魅力や伝統といった観光産業に資する資産を保全し、事業に活用することを通じて、保有物件の競争力並びにポートフォリオの成長及び質の向上を実現して参りました。この経験を通じ、投資法人は、環境・生態系、地域の魅力や伝統
といった観光産業に資する資産が旅の質の向上に欠かせないものであり、それら観光産業に資する資産の活用による観光産業の発展は、その地域の経済や過疎化問題、歴史の遺失問題等に寄与するものと考えるとともに、旅そのものを、サステナブルな「自然と人の営みの共生圏を創る」きっかけとして捉えるに至っています。
 また、昨今、世界的な潮流として「レスポンシブル・ツーリズム」という考え方が台頭してきています。これは、多くの観光地において観光客の「量」を追い求めた結果としてオーバーツーリズムの問題が生じていた 2019年(新型コロナウイルス感染症の感染拡大前)の観光の姿に戻るのではなく、自然環境への配慮や地域社会への貢献等を重視し、それらを尊重する観光客にターゲットを絞る、つまり観光客の「質」を追求することでサステナブルな観光を達成しようという考え方であり、観光地や事業者側が持続可能な観光を目指す従来の「サステナブル・ツーリズム」に加えて、観光客側にも持続可能性を意識していただくことを重視しています具体的な事例として、ハワイでは、40 年以上も前にレスポンシブル・ツーリズムの源流となる概念が誕生しており、昨今では観光客に対し、環境・生態系の保護等を目的としていくつかの行動を守るよう要請しています。また、日本では、世界文化遺産・白川郷(岐阜県)において、来訪観光客数のコントロール等による景観・環境保全への取組みが実施されています。
20221226サスティナブル・ツーリズム

 星野リゾートグループ代表も、観光の輪の中に、観光事業者だけでなく、地域コミュニティー、地域環境、訪れる観光客も入れ、それぞれが観光からフェアリターンを感じることができる観光の姿である「ステークホルダー・ツーリズム」を提唱し、日本の観光事業者は、アフターコロナに向かう先として2019年の観光モデルに回帰するのではなく、ステークホルダー・ツーリズムを構築していくことが、長期的なサステナビリティに繋がるはずであり、日本の観光立国化にとっても非常に重要なことだと主張しています。
 投資法人及びスポンサーである㈱星野リゾートは、レスポンシブル・ツーリズムやサステ
ナブル・ツーリズムの考えが広がる前から、上記のとおり、自分たちの価値観としてそれらに繋がる取組みを行ってきましたが、それらが時代の潮流になりつつあることを踏まえ、不動産投資事業者兼 観光事業者としての投資法人が、より柔軟・広範に持続可能な観光への貢献を果たし、投資法人の持続可能な競争力に繋げていく枠組みについて検討したもの。

 コロナによる旅行業界が受けた打撃に対しての対抗策としてサスティナビリティと絡めて地域資源を利用するという視点は個人的には賛成です。しかし、ガイドラインの変更点を1つ1つ見てみるとこれは投資法人にとってどうなんだ?と思う点がありましたのでかいつまんで3つ紹介していきます。
 
基本方針の一部変更

 観光関連資産については、長期的かつ安定的なキャッシュ・フローの確保が可能であると見込まれる資産、又は、投資法人が保有し若しくは取得予定の資産若しくは当該資産が所在する地域の観光に有益な効果を有すると見込まれる資産への投資を行う旨、並びに、観光産業を通して持続可能な経済と社会の実現を目指すため、サステナビリティポリシー等を定め、これらを尊重して資産運用を行う旨を定めました。
 →「取得予定の資産若しくは当該資産が所在する地域の観光に有益な効果を有すると見込まれる資産への投資を行う旨」ではなく地域の観光に有益な効果をもたらす資産を取得するの間違いではないかと思います。観光に有益だろうがその旅行者達が投資法人が保有する宿泊施設に泊まってもらえないなら意味はありません。うがった見方をすると星野リゾートグループが開発したい地域へのお試し資産取得をさせられる危険性があります。

ポートフォリオ構築方針の一部変更

 観光関連資産については、独立の収益性が見込まれない場合であっても、当該観光関連資産の取得により直接又は間接的に投資法人のポートフォリオに有益な効果が生じ得ること等を考慮し、収益性の有無のみに拘らず投資の可否を判断することを可能とするため、具体的な投資対象資産となる観光関連資産の選定にあたり、当該資産の収益性、並びに投資法人が保有し又は取得予定の資産若しくは当該資産が所在する地域の観光に対して有すると見込まれる効果の内容及び程度を総合的に判断し、その投資の可否を判断する旨を定めました。
 →「収益性の有無のみに拘らず」というところが個人的には気になる点。収益性の無いものと取得す意味はあるのだろうか?。特にスポンサーからの取得が多い星野リゾート・リート投資法人なので星野リゾートグループのメンツのために取得させられる資産が今後発生する可能性があるということではないかと考えられます。

投資基準の一部変更

 観光関連資産への投資にあたっては、当該資産の収益性、並びに本投資法人が保有し又は取得予定の資産若しくは当該資産が所在する地域の観光に対して有すると見込まれる効果の内容及び程度を総合的に検討するとともに、ポートフォリオ全体におけるリスクも勘案の上、投資の可否を総合的に判断する旨を定めました。
 また、観光関連資産への投資にあたっては、投資を行う観光関連資産の特性に応じて必要な
修正を行った上で、ホテル、旅館及び付帯施設と同様の投資基準を準用するものとする旨を
定めました。加えて、観光関連資産に対する投資比率(取得価格ベース)は、3.0%を上限とする旨を定めました。
 →これは投資法人が運用する資産はホテル等の宿泊施設が限らないということを意味するのではないかと思います。観光資源となりうる(もうなっている)公園・お城的なもの、ワイナリー、酒造蔵等も対象になってくるのではないかと考えられます。