2022年12月期決算のJ-REITのNAV倍率、含み益、稼働率の推移を見ていきます。

・NAV倍率
20230308J-REIT6・12月決算NAV倍率推移
20230308J-REIT6・12月決算NAV倍率推移2

 2022年12月は、一旦売り込まれた後は一進一退の動きが続きました。米金融政策への警戒が根強い中、投資家心理が悪化し、売りに押されました。ただ、米雇用統計で労働市場の堅調さが示されたことを受け、米金融引締めが長期化し、米景気を悪化させるとの懸念から米長期金利が低下したことを好感し、反発しました。その後は、米金融政策への警戒は重しになったものの、押し目買いも入り一進一退の動きが続きました。利上げ幅は縮小したものの、タカ派的な姿勢を維持した米連邦公開市場委員会(FOMC)の影響は限定的でした。
 2022年10月11日に日本政府が水際対策を大幅緩和したことにより、2020年2月以来ほぼ消失していた訪日外国人数は10月以降月を追うごとに回復し、12月には137万人となり2019年同月比54%まで回復したしました。2019年年間で訪日外客数の3割を占めた中国は、2022年12月7日にゼロコロナ政策緩和策を発表し、この動きによる訪日客増加が期待されたが、感染拡大が深刻化する中国に対して日本政府は水際対策を強化しました。結果として、2022年12月の訪日外国人は、韓国、台湾、香港、米国、タイの5ヶ国で全体の70.1%となりました。ホテル系J-REITへの期待はあるものの、株式マーケット的なうごきとしては限定的となっています。主要なオフィス系J-REITが元気が無いので全体的にJ-REIT指数もそれに引っ張られている感じがします。


・含み益
20230308J-REIT6・12月決算含み益推移
20230308J-REIT6・12月決算含み益推移2

 日本ビルファンド投資法人は1口当たり分配金の中長期的な安定成長、1口当たりNAVの増大を通じて投資主価値の向上を目指すとしていますが、 物件の入替により含み益を顕在化し、投資主への還元に充当することを運用方針の中で定めています。内部留保を活用し、賃貸マーケット回復時には投資主への更なる還元を実施するとしており、当面のDPUの下限を11,500円に設定していることから含み益を利用し投資家さんへの還元を進めてくれることは既存の投資家さんにとっては良いことだと思います。
 含み益とは直接関係は無いのですが、日本プライムリアルティ投資法人は資産運用会社に投資政策委員会に外部の不動産鑑定士資格を持つ特別委員を招聘することで投資意思決定のガバナンスの強化を図りましした。日本プライムリアルティ投資法人の場合、投資法人の役員会と
資産運用会社の取締役会の間に「投資政策委員会」による審議が入ります。投資法人の役員会~資産運用会社の取締役会からの流れは経験者からすると形骸化しているんですよね。実際物件を取得・売却するかの意思決定は投資委員会という資産運用会社の運用部門の会議で決まることが多いです。投資法人の役員会~資産運用会社の取締役会はただの稟議を揃えるだけの作業と化しています。第三者から構成される投資政策委員会はガバナンスという点では良いのかと思います。資産運用会社で普通に働いている私としてはこんなのされたら迷惑な話ですけどね。スポンサーからの紹介や、資産運用会社の社長の知り合いという「問題児」と化している外部の専門家が多いので定期的にメンツは入れ替えば更に良いと思います。


・稼働率
20230308J-REIT6・12月決算稼働率推移
20230308J-REIT6・12月決算稼働率推移2

 日本リート投資法人は平均フリーレント期間は第19-20期にピークを迎え縮小し、賃料稼働率と契約稼働率の差も縮小傾向にあります。日本ビルファンド投資法人や日本プライムリアルティ投資法人では大口テナントの退去は一巡したと判断しており、今後は稼働率はあまり変わらず推移していくことが予想されます。オフィスビルは大量供給があるので中小規模のオフィスビルでは競争にさらされる可能性が高まるので日本リート投資法人は若干影響が出てくる可能性があると見ています。
 マリモ地方創生リート投資法人は決算説明会資料17ページの中で稼働率好調ぶりをアピールしています。というか最近のマリモ地方創生リート投資法人はしばらく見ない間に資料の作り方が丁寧になってきたというか非常に見やすくなってきています。投資家さんへのアピールが上手くなってきたことは投資家さんにとっても好ましいと思います。レジデンスは明「確な影響なし」ということで94.7%。商業施設はMRRおおむた1件、光明池アクト3件、光明池アクトでの退去2件、賃料減額要請4件、2023年6月の退去予定1件があるものの期末の稼働率は99.8%。
ホテルも1件ありますがオペレーターへの賃貸で稼働率は100%。オフィスビルはMRRデルタビルで2022年8月に1件退去があったものの稼働率は96.3%で見通しとしては上昇傾向にあるとしています。