2023年1月期決算のJ-REITの安全性について分析しました。
・有利子負債利子率
有利子負債利子率は各投資法人とも引き続き減少傾向です。全体的に金利上昇への耐性を確保するため、返済(償還)期限の分散を図ったうえで、有利子負債平均調達年限・高水準の固定金利比率の維持に努めるという方針をとっておりこれががいまの耐金利政策についてはトレンドと言えそうです。産業ファンド投資法人は今後も金利の高いローンの借換えが進むことを明言しているため更に減少していくことになります。また、森ヒルズリート投資法人ではコロナ禍でも資金調達環境に変化なし。引き続きLTV(簿価)40%台半ば・平均残存年数4.0年以上を維持する方針を採っています。
経済情勢や金利動向を常時点検して中長期的な金利変動リスクを想定し、必要に応じた対応を実行するとしており基本的には固定金利としつつも有る程度変動金利も導入しバランスを採っていくことが流れのようです。
個人的には融資関連費用の中に含まれているであろう格付け維持コストについても削減に取り組んで欲しいところですね。グリーンローンやグリーンボンドの発行についても資産運用会社はかなり負担は大きくなっているはずです。資産運用会社の人件費が高くなると結果的に資産運用報酬も高くなります。物件の多額の売却益や、分配金の上昇など目に見えることであれば良いですが、グリーンローンやグリーンボンドにより有利子負債の利子の削減は大したことは無いはずです。資金調達コストは下がったものの、より資産運用報酬が上がってしまっては投資家さんのためにはならないのではないでしょうか。
・LTV
LTVはどの投資法人も目標としているレンジの中でコントロールできています。引き続き各金融機関からのJ-REITに対する融資姿勢についてはポジティブだと思います。独自の取り組みとしては、ケネディクス・レジデンシャル・ネクストでは新たに農林中央金庫の招聘に成功しました。ヘルスケア&メディカル投資法人でも三井住友銀行を中心としたバンクフォーメーションではありますが、新たにSBI新生銀行を招聘しました。今はレンダーポトフォリオの中では最低シェアでが今後は3~4番手くらいまでにシェアを引き上げることになるのではないかと思います。
個人的に是非見ていただきたいのが、コンフォリア・レジデンシャル投資法人の決算説明会資料の財務のページです。その中で今後の戦略として金利の不確実性に備えて、年限1~2年は変動金利に変更し潤沢な手元流動性を踏まえ、年限の短縮化かつ変動金利を導入し、借入コストを削減を図り、年限5年超の有利子負債は固定金利で調達し固定金利比率と平均残存年数を調整するということに取り組んでいます。投資法人の場合は賃料の入金額大きいので一見すると資金繰りは安定しそうですが、分配金の支払いや消費税の中間納付などキャッシュマネジメントをしっかりしないと資金ショートを起こすことにもなりかねません。彼らの言う「潤沢な手元流動性」はキャッシュマネジメントを行えている自信を表していると思います。こういった資金調達コストの調整は他の投資法人もマネできる戦略だと思います。
コメント
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。