J-REIT(ジェイリート)はReal Estate Investment Trust(不動産投資信託)の略です。 多くの投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなど複数の不動産などを購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する商品です。不動産に投資を行いますが、法律上、投資信託の仲間です。J-REITは証券取引所に上場されています。J-REITに投資するメリットはどのようなものでしょうか。

20160101J-REITの基本的な概要

 J-REITは、株式会社でいう株式に当たる、「投資証券」を発行し資金を調達します。この投資証券が証券取引所に上場しており、その価格は投資家の需要と供給によって決まります。J-REITに投資する投資家は、この投資証券を購入することになります。投資家から預かった資金をもとに、J-REITは不動産などに対して投資し、購入した物件の賃料収入や、物件の売買で得られた収益を投資家に分配します。

J-REITが人気の理由


 ①少ない金額から購入できます
 通常、不動産へ投資するためには、多額の資金が必要になります。しかしJ-REITであれば、個々の投資家は少額からでも手軽に始めることができます。

 ②複数の不動産への分散投資が可能です
 多くの投資家から資金を集め、大きな資金として運用するJ-REITでは、個人では難しい、複数の不動産への分散投資が可能になります。これにより、リスクを軽減することができます。

 ③専門家により運用されます
 不動産投資の経験豊富なプロと呼ばれる資産運用会社が不動産を運用し、実際に不動産に関連する業務を行う業者を選択・監督・指示します。通常の不動産へ直接投資する場合のような物件の維持やテナント管理といった手間が省けます。

 ④換金性が高いです
 J-REITは証券取引所に上場されています。これにより、購入や売却の注文がいつでも可能となる上、日々変動する価格をリアルタイムで知ることもできます。また、上場株式と同じく、成行注文や指値注文だけでなく信用取引を行うことも可能です。

 ⑤収益がほとんど分配される仕組みです
 J-REITは、利益のほとんどを投資家に分配する仕組みになっています。このため、実際の不動産そのものに投資するのと同様に、不動産からの収益を毎期の分配金として受け取ることが可能です。


J-REITの抱えるリスク


 ①不動産市場のリスク
 不動産の賃貸市場や売買市場、金利環境、経済情勢などの影響を受けて、J-REITが保有する物件の賃料収入が減ったり、保有物件そのものの価格が低下したりすることで、価格や分配金が変動する可能性があります。特に不動産の売買市場が下降している場合は不動産が売却が売却にしくくなったり、賃貸市場が悪化すると賃料の減額が起こり収益が下がることが考えられます。

 ②金利変動リスク
 J-REITは、一般投資家から資金を集めるほか、金融機関からの借入を行って資金調達している場合があります。この場合、金利の変動はJ-REITの収益に影響を及ぼし、価格や分配金が変動する可能性があります。金利変動リスクはそのJ-REITがどういう種類の物件を運用しているのか、スポンサー(資産運用会社の親会社またはグループ)の信用力によっても変動します。

 ③地震・火災などによるリスク
 投資対象の不動産が地震や火災の被災を受けた場合など、予想不可能な事態によって価格や分配金が変動する可能性があります。

 ④上場廃止になるリスク
 証券取引所が定める上場基準に抵触し、上場廃止になった場合には、取引が著しく困難になる可能性があります。

 ⑤運営に関するリスク
 J-REITは一般の法人と同様に、倒産するリスクがあります。このリスクが表面化した場合、価格が著しく下落する可能性があります。建前はこの程度の表現ですが、運営に間する最大のリスクは「資産運用会社が親会社の進める物件を購入してしまうことにより第三者から購入するよりも高い価格で購入してしまう可能性があります。

 ※購入の際は目論見書にリスクを説明している項目がありますのでそのJ-REITが持つリスクを知ることが可能です。


J-REIT投資にかかる税金

 J-REIT投資から発生する利益は、「譲渡益(売却益)」と「配当金」の2つです。 この「譲渡益(売却益) 」 や「配当金」には、税金がかかります。基本はシンプルですが、特例などを利用する際には注意が必要です。なお、「譲渡益(売却益) 」 は他の所得と合算しない「申告分離課税」が適用されます。「配当金」は、一定税率の源泉徴収のみで確定申告しないこともできますが、確定申告により総合課税や申告分離課税とすることも可能です。

J-REITの譲渡益(売却益)にかかる税率と、配当金にかかる税率

譲渡益にかかる税率 配当金にかかる税率
平成26年~令和18年 20.315%(所得税15.315%・住民税5%) 20.315%(所得税15.315%・住民税5%)
令和19年~ 20%(所得税15%・住民税5%) 20%(所得税15%・住民税5%)
 「復興財源確保法」施行により平成25年~令和18年まで2.1%の付加税が所得税に上乗せされ15%×102.1%=15.315%となってます。

 譲渡益(売却益)は、総平均法に準ずる方法で取得費等を計算して求めます。同じ銘柄を複数回に分けて買った場合、売却の都度取得単価等を計算し譲渡損益を計算します。
 J-REITの譲渡損益の計算方法は、総平均法に準ずる方法で取得費を計算して行います。「損切りのつもりが利益になっている」「思っていたより損失の額が多い」等と誤解される方はここが原因です。

 (譲渡損益の計算における総平均法に準ずる方法での取得費の計算は、(買付単価×株数+手数料等)÷株数で計算します。小数点以下の端数は切り上げとなるので計算上は実際のコストより高くなる場合があります。)

 総平均法に準ずる方法とは、複数回に分けて買った総コストと売却分を考慮して平均することにより、売買全体を捉えたものです。特定口座では自動的に計算していますのでご自身で計算する必要はありません。ただし、総合課税として確定申告することにより、配当金に一定率を乗じた金額が所得税額や住民税額から控除される配当控除を行うことも可能です。
 また、申告分離課税として確定申告することにより、上場株式等の譲渡損失と損益通算することも可能です。ただし、確定申告を行うことにより、配偶者控除等に影響する場合もあります。


J-REITの譲渡損失の繰越控除

 上場株式等では譲渡損失の内、その年に控除しきれない分は、確定申告することにより翌年以降3年間にわたり、上場株式等の譲渡益や配当金等から控除できます。これはJ-REITにも適用されるので譲渡損失が残った場合は確定申告して繰り越すようにしましょう。
 ただし、譲渡損失を繰り越すには、取引がない年も含め確定申告する必要があります。

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